生物科
指導方針
私立大の医学部入試での出題例を踏まえて全分野を余す所なく解説し,正確で詳細な知識を確立する。同時に,思考力を刺激する授業を毎回展開する。講義ではいつも頭をフルに使ってもらう。「なぜ」とか,「どのように」といった質問を常に考える。
1年制のクラスでは,前期および夏期講習会でしっかりとした基礎を確立し,後期にそれらを活用した問題を演習する。テキストには基本問題ばかりではなく,やや重厚な問題もおさめられている。1つの大問が何ページにも渡ることがある。始めは圧倒されて,「こんな長い文章問題は絶対に無理」と感じるかもしれない。でも,自分の可能性をもっと信じてほしい。あきらめないで毎回講義に意欲的に参加すれば,皆さんはきっと変わるはずだ。自分に期待しよう。
1年制のクラスのテキストには,リード文読解や図表解析,実験の立案,ノーベル賞関連の研究など最新の知見に関する問題を豊富に含む。また,数的処理の必要な問題も掲載されている。ほんの一例を紹介しよう。神経系の分野では,しばしば出題されるネルンスト(Nernst)の式だけでなく,GHK(Goldman-Hodgkin-Katz)の式も演習等で扱う。また,個体群の経時的変動も数理的にしっかりと解析する。さらに植物群落の生産構造の解析では,ランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則を用いて,葉群に光がどのように吸収されるか,葉の付き方にどのような特徴があるかなども考える。
おそらく,高等学校での生物の授業との乖離に驚くだろう。でも,心配はいらない。講師がしっかりとかみ砕いて教える。きちんと分かるまで丁寧に講義するので,毎回の授業で成長を実感できるはずだ。
2年制のクラスでは,1年目に全分野の講義を1回行う。また,講習会では復習を織り込み,定着を図る。しっかりと毎回学習している人の中には,1年目で合格する人も出てくるかもしれない。講師たちもそれを目指して講義するつもりだ。がんばろう!
生物の入試問題は
大きな変化を遂げている
「生物」は,多くの受験生にとって高得点を取るのが難しい科目である。「暗記さえすれば何とかなる」という生物選択者にありがちだった安心感は過去のものである。「受験で生物選択は不利」との声をしばしば聞くようになった。
そこでまず,入試生物の現実を理解して欲しい。生物ではいわゆる定石的な問題の比率が減っており,初見問題が増加している。当然,設問文が長くなる傾向がある。文章を素早く読み進めながらヒントや伏線を見いだし,推理・考察していく。思考力はもちろんのこと,図表データを解析する力,仮説を検証するために適切な実験をデザインする能力なども重要視されてきた。
グラフ化したり,数的な処理を要したりする問題も増えている。例えば,「ベイズの定理」を用い,疾患遺伝子を保因する事後確率を計算させたり,COVID-19のPCR検査の陽性的中率を考察させたりする問題,体内時計など振動状態の時間変化を表すモデルとして隣接三項間漸化式を与え,グラフ化して検討したり,漸化式に含まれる特定の項の意味を答えさせたりする問題など,相応の数学的な力を要する内容もみられる(振動の問題は物理学でも扱う)。さらに,生態学でも数理的な解析が盛んに出題される。
加えて,化学分野との融合問題も出題される。ミカエリス・メンテンの式とラインウィーバー=バークのプロットのような定石問題だけでなく,ヘモグロビンの酸素解離曲線やアロステリック酵素の反応速度の解析に,ヒルの式やヒル・プロットなども出題されてきた。
生物では最新の知見に関する問題も珍しくない。mRNAワクチン(2023年ノーベル生理学・医学賞),ゲノム編集技術CRISPR-Cas9システム(2020年ノーベル化学賞),体内時計(2017年ノーベル生理学・医学賞),「神経科学の革命」評される光遺伝学(Optogenetics)など,枚挙にいとまがない。『Nature』や『Science』などに近年掲載された興味深い研究成果も大変よく出題される。
私立大学の医学部入試で
成功するには
このように生物の入試問題は,地頭の良い人に圧倒的に有利な内容にシフトしてきた。定石的な問題に対応できることは最低限必要だが,本当の勝負はその先にある。見たことのない題材にその場で対応する力を養成しなければならない。
さらに,私立医学部では国公立の過去問題を再利用した問題がときおり出題される。したがって,国公立大学の良問に対しても,アンテナを張っておく必要がある。
コツコツと努力を積み重ねても,さほど点数が伸びない受験生が多く存在するのもうなずける。受験生にとって,求められる能力を自力で伸ばすのは本当に難しいと思う。
でも,安心して欲しい。D組の生物科講師たちは全員,生徒の学力を飛躍的に高めてきた豊富な実績がある。是非 講師たちを信じて,付いてきて欲しい。一緒に頑張ろう。
カリキュラム
1年制コース
(ハイレベル・スタンダードクラス)
全分野を前期・夏期で1回,後期でさらに1回扱う。後期以降は演習中心である。
- (前期・夏期)
- 基礎的な事項から始めて,上位クラスでは発展的な内容にまで踏み込む。典型的な問題を演習して,講師と共に弱点を補強する。
- (後期)
- 予習前提の演習を通じて,知識の定着と初見問題への対応力を強化する。また,授業内で短時間に解答させる課題を組み込み,処理能力の向上を図る。
- (冬期・直前期)
- 医学部の過去問題を徹底的に演習する。
2年制コース
(プログレッシブクラス)
1年目に全分野を1回講義し,演習も行って理解を定着させる。無理なく学べるように講師が十分に配慮し,生物学用語や重要な概念,生命現象の仕組みを丁寧に解説する。1年目で入試に対応できる力をほぼ身に着け,2年目には上位合格を目指す。
- (前期)
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- 生命現象と物質
- 遺伝子のはたらきと生殖
- 生物の環境応答(神経系・循環系・排出系・消化系・内分泌系)
- (夏期)
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- 前期の復習と演習
- (後期)
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- 生物の環境応答(免疫・受容器・効果器・植物の反応と調節)
- 進化と系統
- 遺伝の法則と発生
- 生態と環境
- (冬期・直前期)
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- 後期の復習と演習